契約の基礎(成立要件・有効要件・効果帰属要件)
さて、今回からは、民法に関連して、税理士の先生が抑えておくべき事項についてのお話です。今回は、特に「契約」というものが何なのか?という点を法律的に解説したいと思います。
税理士の先生方にお話するのもおこがましさもありますが、是非基本に立ち返るという意味で、お読みいただければと思います。
税理士の先生が、民法を学ぶことの意味がどこにあるのかについて解説した記事でも、書きました通り、税務判断の対象となる経済活動は契約(取引)行為によって、構成されますので、是非もう一度確認いただければ幸いです。
契約の整理として、①成立要件、②有効要件、③権利帰属要件という形で契約の効力の要件を整理するのが民法学上一般的ですので、それについて今回は、解説していきます。
1 契約の成立要件〜契約書がなくても契約は成立する!?〜
まず、契約とは、「申込み」の意思表示と「承諾」の「意思表示の合致」によって成立するものとされています。
では、意思表示の合致とはそもそも何なのでしょうか。少し例をあげながら見ていきましょう。少し時代錯誤感のある例ですが、今後の解説に利用しやすいので、以下の例を使用します。
例
Bさん:「マイルドセブン100カートンを410,000円で売りましょう。」
結論からいうと、このAさんの「」の言葉が「申込み」の、Bさんの「」の言葉が「承諾」の意思表示ということになります。
1.1 意思表示とは!?
意思表示とは、「ある一定の法律効果の発生を目的とした「内心」の「表示」」という風に定義されます。
これを上の例使って図にすると、「内心」(心の中)と「表示」(言ったこと)下記のようになり、結局はこの「表示」(言ったこと)が意思表示となります。
この例では、売買契約の本質的な要素である「対象物」「個数」「代金」の点で、AとBの(意思)表示が合致していますので契約が成立する、つまり契約の成立要件を満たしているということになります。
この表示が合致していれば契約は成立するのですから、契約書は契約に必須ということではないということになります。
2 契約の有効要件
次に意思表示が合致し、契約が成立したとしても、実は、これが必ず有効というわけではありません。
契約がその効力を有するには、有効要件を備えている必要があります(無効の要件を満たさない必要があると言った方がわかりやすいかもしれません。)。
この有効要件の典型例として、
通謀虚偽表示による無効(民法94条)錯誤無効(民法95条)、詐欺または強迫による取消(民法96条)の規定の法律効果として、契約が有効でなくなる場合が挙げられます。
○錯誤無効(民法95条)・・・A単体の内心と表示が違う場合を指します。下記の図では、カートン(10パック入り)とダースを勘違いしており内心と表示が異なる場合です。
○詐欺または強迫による取消(民法96条)・・・これは、内心と表示は合致しているものの、詐欺や強迫によりその意思表示に瑕疵(騙されたり、脅されたりして生じた欠陥)があるので、詐欺や強迫を受けた方は契約を取り消すことができるされています。
その他にも、契約内容が公序良俗に反するものは無効(民法90条)とされます。例えば、殺人を依頼し、お金を支払う契約等が想定できます。
なお、
この有効要件は、前回の証明責任に関する記事の「1.2」の権利障害規定となりますので、法律関係の発生を争う者(無効と主張する者)が、証明責任を負うことになります。
3 契約の効果帰属要件
これはずばり、「代理」の場合をいいます。本人(売主)のために代理人(代理人)が、買主と契約をする行為で、代理人の行為が本人に法律効果を生じさせるための要件を言います。
民法99条以下に定めがあり、その要件事実として
②本人のためにすること買主に伝えたこと(顕名)
が原則として必要になります。
4 まとめ
以上が契約についての総論的な整理となります。
以前説明した要件事実と証明責任という観点からもとても重要な整理になりますので、これを抑えておいていただければと思います。
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