取得財産を超える遺産分割における代償金と贈与税など

今回は、相続税と贈与税等の峻別の問題として、相続の遺産分割において、取得財産を超える代償金を他の共同相続人に支払う場合について、民事・税務の視点から解説します。

今回の解説では、以下の事案を前提に解説します。

1 遺産分割における代償分割

遺産分割において、不動産を分割する方法としては、現物のまま分割する方法(現物分割)、不動産を売却しその代金を分割する方法(換価分割)および不動産自体を特定の相続人が取得する代わりに代償金を支払う方法(代償分割)という3つがあります。

本件では、長男Xが甲不動産を取得する代わりに、長女Yに対して代償金を支払う代償分割という形式で遺産分割をする方針となっています。

2 取得財産を超える代償金の支払いと贈与税

しかし、形式上は遺産分割による代償分割となっていますが、Xが取得する甲不動産の財産額2,000万円の価値を超える3,500万円(差額1,500万円)を、Yに対して支払う方針となっています。

民事上は、そのような合意自体が無効となるわけではないものと考えられます。

しかし、代償分割に関して、取得した財産の価額を超える額の代償金の支払いがあった場合、税務上は、「相続」の範囲をでた財産移転であると解されます。仮にこれを無制限に「相続」とすると、相続により、特定の相続人の固有財産からの他の相続人に対する財産移転が自由に可能ということとなってしまうからです。

この点について、東京地判平成11年2月25日は、以下のとおり判示しています。

  1. ◯東京地判平成11年2月25日
  2. 代償分割に係る代償金として、代償債務者である相続人からその者が取得した積極財産の価額を超える代償金を受領した場合には、その積極財産の価額を超える部分は、現物をもってする分割に代える代償債務に該当せず、代償債務者から他方相続人に新たな経済的利益を無償にて移転する趣旨でされたものというべきである。したがって、代償債務のうち他方相続人が取得する積極財産を超える部分については、代償債務者の相続税の課税価格の算定に当たって、消極財産として控除すべきではなく、他方相続人が取得した同部分に相当する代償債権の額は、代償債務者からの贈与により取得したものというべきである。

なお、このような「相続」と「贈与」等の峻別の問題は、以下などでも問題になりますので、興味のある税理士の先生はそちらもご参照ください。

3 まとめ

以上より、相続税申告における長男Xの課税価格から控除される代償財産の価額は取得財産の価額2,000万円となり、長女Yの課税価格は2,000万円とされ、差額の1,500万円は、長男Xから長女Yに対する贈与税の対象となるものと考えられます。

なお、実務上は、甲不動産の評価方法として、3,500万円以上の価額で評価できないかなども検証する必要があるでしょう。

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弁護士法人 ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎
弁護士となり、鳥飼総合法律事務所に入所。その後、弁護士法人ピクト法律事務所を設立し、代表に就任。 現在、200名以上の税理士の先生が会員となっている「税理士法律相談会」を運営し、年間400件以上、税理士の先生の法律相談を受けている。 特に法務と税務がクロスオーバーする領域に定評があり、税理士と連携した税務調査支援、税務争訟対応、相続・事業承継事前対策と紛争対応、少数株主事前対策と紛争対応、税賠対応(税理士側)や税理士事務所内部の法的整備などを多く取り扱う他、税理士会をはじめとした税理士向けの研修講師も多数勤める。 主な著書に「非公開会社における少数株主対策の実務〜会社法から税務上の留意点まで〜」「民法・税法2つの視点から見る『贈与』」、「民事・税務上の「時効」解釈と実務:〜税目別課税判断から相続・事業承継対策まで〜」(清文社)、「企業のための民法(債権法)改正と実務対応」(清文社)がある。

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